2018年10月11日

イニシャル費の歴史を振り返る

《時は昭和》

プリント基板の製造工程のスタートは原稿作りから始まります。

方眼紙の上に部品を配置し回路図に従って、人力によってパターンを配線していきます。
これがパターン設計になります。
次にこの方眼紙の上にマイラーフィルムを当て、テープやシールを貼ってアートワークを作ります。これが原稿になります。
今ならCADで簡単にデータが作くれますが、当時はこのパターン設計とアートワーク製作にかなりの時間と費用をかけていました。
アートワークのテーピング技術が特殊技能の様に扱われた時代もありました。

次にこのアートワークをカメラで撮影しパターン、レジスト、シンボルのフィルムを作製します。またプリント基板の注文数によっては、これらを面付けと言って、複数転写します。このフィルム代がイニシャル費となります。

またかつては、プリント基板のパターン形成、レジスト塗布、シンボル印刷の全てを印刷法で製造していました。この印刷法には版が必要となります。
そしてこの版代がまたイニシャル費となります。

穴明けのプログラムも上記のフィルムを元にして、デジタイザーで1穴ずつ入力してプログラムを組んで行きます。
これがNCプログラム代というイニシャル費になります。

外形加工に於いても、ルーター加工であれば、フィルムから加工プログラムを作ります。これがまたイニシャル費となります。
量産でプレス加工となれば、金型代という費用も発生します。

この様にプリント基板を製作する上で色々な道具やデータが必要でした。
これらが、イニシャル費という事になります。

《そして現在》

パターン設計はCAD設計になり、アートワークやカメラ撮影はなくなり、いきなりフィルムや穴明けや外形加工用のデータが出力出来るようになりました。
これらのデータが客先からの支給という事になれば、
パターン設計代は発生しません。
費用が発生するのはフィルム代というイニシャル費だけです。

フィルムの品質面でもプロッターで描画する為、精度の向上したフィルムが
できます。
さらに製造する工程も版を使用せずフィルムを使って製造する工程になり
版が不要になった工程もあります。 設備によってはフィルムすら、必要としない場合もあります。

プリント基板を作る為の道具や使用するデータは
この様に変化してきています。
それに伴ってイニシャル費も変わってきています。

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