
プリント基板とは?基礎知識から材質、製造方法まで徹底解説
プリント基板は、電子機器の性能や信頼性を左右する重要な部品です。しかし、材質や構造、製造方法によってさまざまな種類が存在するため、具体的な特徴や違いがわからないという方も多いでしょう。
この記事では、プリント基板の基礎知識や材質、構造の特徴、実際の製造工程をわかりやすく解説します。さらに、設計時に考慮すべきポイントや品質管理・検査基準の重要性、最新技術についても紹介します。
オーダーメイドでの製造が推奨される理由や外注先の選定ポイントにも触れているため、ぜひ最後までご覧ください。
プリント基板の基礎知識
まずは、プリント基板について調べている方のために、どのような用途に使われているかなど、プリント基板の基礎知識についてわかりやすく紹介します。
プリント基板とは?
プリント基板とは、電子部品を取り付けて、電気的につなぐための土台となる板のことです。
この板の上に電子部品を並べて固定することで部品同士が電気的につながり、信号や電力がスムーズに流れる電子回路が作られます。そして、完成したプリント基板は最終的に電子機器の中に組み込まれ、製品として動作するようになります。
プリント基板は外側からは見えないため普段利用者が目にすることはありませんが、電子機器を動作させるために欠かせない重要な部品です。
プリント基板の用途・機能
プリント基板は、あらゆる分野で活用されています。スマートフォンやパソコン、タブレットなどの情報通信機器をはじめ、冷蔵庫や洗濯機、テレビ、エアコンといった家電製品にも使用されています。さらに、自動車や医療機器、産業機器、航空機など、幅広い分野で利用されており、現代の電子機器において不可欠な存在です。
プリント基板の正式名称
一般に使われる「プリント基板」という言葉は、「プリント配線板」と「プリント回路板」の総称です。さらに、基板の用途や加工の状態によってさまざまな呼び方があるため、用語が混同されることも少なくありません。
「プリント配線板」と「プリント回路板」の違いや、それぞれの代表的な別称について紹介します。
プリント配線板 (printed wiring board)
電子部品がはんだ付けされていない配線だけの板(一般的に緑色)をさします。 この『プリント配線板』が正式名称となりますが、これが色々な呼び方をされています。
プリント基板、基板、プリント板、P板、生基板、生板、PWBなどがあります。
プリント回路板 (printed circuit board)
プリント配線板に電子部品が半田付けされ、電子回路が形成されている状態の物をさします。
これも『プリント回路板』が正式名称ですが、色々な呼ばれ方をされています。
ベアボード、ユニット、実装基板、アッセンブリ―などです。
この【プリント配線板】と【プリント回路板】が混同して使われる事が多く見受けられます。 ちなみに、電子業界の”キバン”は【基盤】ではなく【基板】です。 これも混同していますね。
プリント基板の役割・重要性
プリント基板は以下のように、さまざまな重要な役割を担っています。
- 電子部品の接続
プリント基板は、電子部品同士を電気的につなぐ役割を持っています。基板上の銅箔を通して、電気信号や電力が送られます。
- 部品の固定
電子部品を決められた場所にしっかりと取り付ける役割もあります。衝撃や振動でも動かないように基板上に固定するため、安定した信号伝送と動作が可能です。
- 絶縁
回路内で不要な接触があるとショートする恐れがありますが、基板は絶縁性の高い素材で作られているため、リスクを防いで安全性を保ちます。
- スペースの有効活用
プリント基板を使うことで、従来の電線やケーブルなどの配線方式よりも回路をコンパクトにまとめられ、小型で軽量な電子機器の設計が可能です。
さらに、プリント基板は同じ回路を正確に複製できるため、量産にも適しています。近年ではIoT機器やウェアラブル端末などの普及により、より高密度で多機能な基板が求められており、その重要性は今後ますます高まっていくと考えられます。
プリント基板のメリット
プリント基板のメリットを考える前に、部品配線の歴史を振り返ってみます。
プリント基板が広く普及する以前は、電子機器の配線は絶縁被覆された銅線の端を各部品に半田付けしていました。
この作業は複雑で手間のかかるものでした。またこの銅線がいわば回路の役目で、この線材作りも大変時間を要する作業でした。 これら全ての作業が手作業で行われ組立工数、検査工数すべての工程で時間を要し量産には対応できませんでした。
また手間がかかる割に誤配線のリスクも高く信頼性に欠ける物でした。この状態を解消したのがプリント基板です。
生産性の向上
プリント基板によって回路が形成されている為に、銅線による半田付けは必要ありません。
部品の配置も基板上の決められた位置に半田付けをすれば良いので、実装の自動化も可能です。
これにより大幅な生産性の向上が図れます。
品質の向上
手作業による線材の半田付けから自動実装になる訳ですから品質は当然向上します。
また、検査も人による目視検査から検査機での検査が可能になります、品質保証の面でも信頼できる製品になります。
製品の小型化に対応
各種部品をプリント基板という1枚の板に収める事により製品の小型化に対応出来ます。
プリント基板でコンパクトにまとまる事により、製品のデザインの検討や小型化の検討に大いに貢献出来ます。
コストの削減
自動化による工数の削減、品質向上による不良品の削減、コンパクトになる事により材料の削減。
これらはすべてコストの削減に繋がります。
プリント基板の種類【材料別】
プリント基板は、使用される基材の種類によって特性や用途が大きく異なります。ここでは、もっとも基本的な「リジッド基板」から、柔軟な構造をもつ「フレキシブル基板」、そして両者の特長を兼ね備えた「リジッドフレキ基板」まで、それぞれの構造的な特徴や利点などについてわかりやすく解説します。
リジッド基板
リジッド基板は、硬質の絶縁体を基材としたプリント基板です。「リジッド(Rigid)」とは「硬い」という意味で、その名の通り曲げたり折り曲げたりはできません。
剛性のある素材(ガラスエポキシ樹脂など)を使用しているため、強度や耐衝撃性に優れており、高温環境や湿度の変化にも強いという特徴があります。安定した性能を発揮しやすく、高い耐久性と信頼性が求められる用途に適しています。
また、設備に対して基板を直接固定できるため、部品の実装が容易に行える点も大きな利点です。
フレキシブル基板
フレキシブル基板は、ポリイミドやポリエステルなどの薄くて柔らかい絶縁体を基材とした自由に曲げられるプリント基板です。表面には銅などの金属箔で配線パターンが施されており、繰り返し曲げても電気的な性能を保てるように設計されています。
この柔軟性を活かして、スマートフォンなどの複雑な構造を持つ電子機器によく使われています。コンパクトで軽量な設計が可能なため、電子機器の小型化や薄型化のニーズにも対応できます。
一方で、部品の実装時には基板を固定するためのパレットが必要になるため、初期コストがかさみやすく量産にはあまり向いていません。それでも、省スペース性や設計の自由度の高さといった利点から幅広い分野で採用されています。
リジッドフレキ基板
リジッドフレキ基板は、「硬いリジッド基板」と「曲げられるフレキシブル基板」を一体化した複合型のプリント基板です。
リジッド基板の「部品を実装しやすい」という利点と、フレキシブル基板の「狭いスペースや可動部に対応できる柔軟性」という利点の両方を活かせます。
構造としては、リジッド部分(剛性部分)には一般的にガラスエポキシ樹脂を、フレキシブル部分(柔軟な部分)にはポリイミドやポリエステルといった素材を使用します。この組み合わせによって複雑な形状やスペースの制約がある機器にも柔軟に対応でき、安定した性能と高い耐久性を実現できます。
設計や製造には通常の基板よりもコストがかかりますが、リジッド基板やフレキシブル基板だけでは対応しきれなかった課題を解決できるのが大きなメリットです。モバイルデバイスや医療機器、自動車分野などで応用されています。
プリント基板の種類【構造別】
プリント基板の構造は、回路の複雑さや性能に大きく関わってきます。「片面基板」「両面基板」「多層基板」といった構造に加え、さらなる小型化・高密度化を可能にする「ビルドアップ基板」など、用途に応じて構造は多岐にわたります。ここでは、それぞれの構造がもつ特徴や製造方法、適した使用シーンについて詳しく解説します。
片面基板
片面基板は、回路や配線が基板の片面だけに施されている、もっとも基本的な構造のプリント基板です。
配線や電子部品はすべて片側に集中しているため、回路設計の自由度はあまり高くなく、複雑な配線を必要とする用途には適していません。近年では使用頻度が減少していますが、構造がシンプルなため製造コストが非常に低いといったメリットがあります。コストを抑えて大量生産に向いており、テレビなどの家庭用電子機器などに活用されています。
両面基板
両面基板(または二層基板)は、基板の表と裏の両面に配線が施されたプリント基板です。
片面基板では配線の交差が難しいのに対し、両面基板では「ビア(導通孔)」を使って両面の配線を接続できるため、より複雑で高密度な配線が可能になります。この構造により電子部品の高集積化や製品の高機能化に対応できるため、片面基板よりも多くの用途に適しています。
現在ではより高速かつ大量の情報処理が求められるようになったため、活用する頻度は減少していますが、家庭用の電子機器から産業用機器、さらには高信頼性を求められる製品まで幅広く活用されています。
多層基板
多層基板は、3層以上の導体層と絶縁層を交互に積み重ねた構造を持つプリント基板です。
導体層には銅箔が使われ、絶縁層にはガラスエポキシ樹脂やポリイミドなどの材料が用いられます。各層はプリプレグと呼ばれる接着シートを使って積層され、1枚の板として仕上げられます。
内部にも配線を形成できるため、回路の高密度化や設計の自由度が飛躍的に高まります。回路の小型化や高速信号伝達、クロストーク(異なる信号線からのノイズの混入)の抑制といった面でも優れており、高機能や高信頼性が求められる電子機器に最適です。
主な用途としては産業用機器やモバイル機器など、軽くてコンパクトかつ高密度な実装が求められる分野で幅広く採用されています。
ビルドアップ基板
ビルドアップ基板は多層基板の一種であり、「積み重ねる」の意味をもつ「build up」に由来しています。
一般的な多層基板は、ドリルなどの工具を使ってすべての層を貫通させるスルーホールで接続します。(スルーホールは基板に開けた穴の内壁に銅メッキを施し、表面と裏面を電気的に接続するためのもの)しかし、工具を使った方法では特定の層同士だけを接続できず、基板が大型化しやすいという課題があります。
この課題を解決するために考案されたのが、レーザーで微細な穴(レーザービア)を開けて必要な層だけを接続する「ビルドアップ工法」です。機械的に開けたスルーホールの最小径がおよそ0.3mm程度であるのに対し、レーザービアは約0.1mmまで小さくできます。そのため、電子機器をさらに小型化や高機能化できる利点があります。
主にスマートフォンやパソコン、スピーカー、カーナビ、ゲーム端末など、小さく多機能な電子機器部品に多く使用されています。
プリント基板の種類【材質と使用用途】
プリント基板の性能を大きく左右するのが、基板に使用される材質の特性です。ここでは「紙フェノール」や「紙エポキシ」、「ガラスエポキシ」、「ガラスポリイミド」など、さまざまな材質ごとの特長やコスト面、加工性などについて紹介します。また、それぞれどのような機器に利用されているか使用用途についても解説します。
紙フェノール基板
紙フェノール基板は、紙基材とフェノール樹脂を組み合わせて作られた古くから使用されているプリント基板材料の一つです。「ベーク」や「ベーク基板」、「ベークライト」などの呼び名でも知られています。また、規格の種類としては「FR-1」「FR-2」「PP7F」「 PP3F」があります。
大きな特徴は、非常に低コストで加工性に優れている点です。切断や穴あけがしやすく、後述する「ガラスエポキシ基板」のように専用工具を必要としないため、簡単に取り扱いができます。一方で、耐久性や耐熱性、吸湿性、電気的特性(絶縁抵抗)といった性能面は他の材料に劣ります。
また、紙フェノール基板は主に片面基板として用いられます。紙フェノール基板は銅メッキに不向きという特性があり、スルーホールの形成は困難です。そのため、多層基板や高密度配線には適していません。
【使用用途】
コスト面の優秀さから、以下のような製品の基板に大量に使用されています。洗濯機・冷蔵庫などの白物家電、デジタル家電、LED照明、家庭用電話機、ゲーム機、キーボード、ステレオ、ラジカセなどが挙げられます。
紙エポキシ基板
紙エポキシ基板は紙を基材とし、エポキシ樹脂を含浸させて作られたプリント基板です。規格としては、「FR-3」「PE1F」があります。紙フェノール基板よりも耐熱性や吸湿性、絶縁抵抗、高周波特性に優れており、スルーホールの形成も可能です。
ただし、後述する「ガラスエポキシ基板」と比べると性能面ではやや劣ります。性質的には紙フェノール基板とガラスエポキシ基板の中間に位置づけられ、現在では主に片面基板として使用されています。
【使用用途】
紙エポキシ基板は、紙フェノール基板よりも絶縁抵抗性や吸湿性に優れているため、湿気の多い環境や高電圧を扱う回路での使用に適しています。具体的には、洗濯機や食器洗い機などの家庭用家電をはじめ、家庭用電子機器にも広く利用されています。
ガラスエポキシ基板
ガラスエポキシ基板は、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させて製造されるプリント基板です。現在もっとも広く使用されている基板素材の一つで、多層基板では多くがこのガラスエポキシ基板で構成されています。規格としては、「FR-4」「FR-5」「GE4F」「GE2F」があります。
寸法変化が小さく強度が高いため、耐久性に優れています。また、絶縁抵抗や高周波特性にも優れており、難燃性も高いことから信頼性の高い電子機器に多く採用されています。一方で、強度の高さゆえに加工性は低く、専用の工具や設備が必要になります。また、コスト面では紙フェノール基板の2〜3倍程度と高価であることには注意が必要です。
【使用用途】
ガラスエポキシ基板は難燃性や導電性、耐久性に優れており、高信頼性や高周波特性が求められる回路に適しています。両面基板としてはパソコンや家庭用の電子機器、OA機器などに広く使用されます。多層基板ではICカードやデジタルカメラ、コンピュータなどの高密度回路にも採用されています。
FR-5はとくに高い耐熱性や難燃性に優れているため、高温環境下や自動車のような過酷な条件で採用されるケースが増えています。
ガラスコンポジット基板
ガラスコンポジット基板は、複合基材(ガラス布+不織布)にエポキシ樹脂を含浸させて作られるプリント基板です。代表的な規格として「CEM-3」があり、「セムスリー」や「コンポジットセムスリー」とも呼ばれます。
電気特性は、ガラスエポキシ基板(FR-4)とほぼ同等でありながら、コストを抑えられる点が大きなメリットです。また、耐トラッキング性(配線間でショートを起こしにくい耐性)にも優れており、安全性が求められる用途にも対応できます。一方で、機械的強度や寸法安定性、耐久性はガラスエポキシ基板(FR-4)に比べて劣ります。
加工性に関しては、紙フェノール基板とガラスエポキシ基板の中間程度で、切削性がよくパンチング加工も可能です。多層基板には使用されず、主に両面基板として使用されるのが一般的です。
【使用用途】
ガラスコンポジット基板は主に両面基板として使用されており、さまざまな分野で採用されています。家電製品やAV機器、アミューズメント機器(パチンコ・スロットなど)、一部の産業機器などが挙げられます。
複合基材エポキシ基板
複合基材エポキシ基板は、紙基材にエポキシ樹脂を含浸させて作ったプリント基板の表面に、「ガラス布+エポキシ樹脂のプリプレグ(接着シート)」を強度補強として使用している基板です。
前述した「ガラスエポキシ基板(FR-4)」や「ガラスコンポジット基板(CEM-3)」の代替材料として使用されることがあり、これらよりもコストを抑えることが可能です。ただし、市場での流通は多くなく、あまり一般的ではありません。
機械的特性とコストのバランスとしては、紙フェノール基板(FR-1)とガラスエポキシ基板(FR-4)の中間に位置し、FR-4よりも柔らかいという特徴があります。
【使用用途】
複合基材エポキシ基板は、ガラスエポキシ基板(FR-4)やガラスコンポジット基板(CEM-3)の代替材料として使用されるため、用途も共通しています。(パソコンや家庭用電子機器、OA機器、ICカード、デジタルカメラ、家電製品、AV機器、アミューズメント機器、一部の産業機器など)
ガラスポリイミド基板
ガラスポリイミド基板は、ガラス繊維の布にポリイミド樹脂を含浸させて作られたプリント基板です。ポリイミドは高分子材料の中でもとくに優れた耐熱性(約400℃の高温にも耐える)と高強度を持ち、さらに絶縁性にも優れています。
ガラスポリイミド基板はもともと、アメリカの航空宇宙分野で求められた高難燃性材料として開発されました。リジッド基板としても使用可能ですが、主にフレキシブル基板のベース材料として採用されており、耐熱性や絶縁性が求められる用途で広く活用されています。
【使用用途】
高温環境下での使用が求められる機器に多く採用されています。具体的な用途としては、小型家電、医療機器(ウェアラブル端末やセンサー)、航空機や宇宙機器、自動車システム(カメラ、エアバッグ、各種センサー)などが挙げられます。
BT基板
BT基板は、ガラス布やガラス不織布を組み合わせた複合基材に、BT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂を含浸させて作られるプリント基板です。BT樹脂は三菱ガス化学株式会社が開発した熱硬化性樹脂で、主に「ビスマレイミド(Bismaleimide)」と「トリアジン(Triazine)」を結合させたものです。
かつては、高性能なプリント基板材料としてセラミックが主流でしたが、BT樹脂はセラミックと同程度の性能を持ちながらコストを抑えられる点が評価されました。そして、材料の代替として注目され、1985年には半導体パッケージ用の積層板の材料として初めて採用されました。
BT基板は、高温環境下でも安定した性能を保つ優れた耐熱性と絶縁性を持っています。また、精密かつ、高信頼性が求められる電子回路の基材に適しています。
【使用用途】
BT基板は、高い耐熱性や寸法安定性、絶縁性能が求められる分野で使用されています。具体的には、軍用機器や航空宇宙機器、高速データ通信システム、自動車の電子機器など、過酷な環境下でも安定動作が求められる用途に活用されています。
プリント基板の製造工程
プリント基板は、設計から完成までに多くの工程を経て製造されます。以下では、プリント基板がどのような手順で形づくられていくのかを、工程ごとに詳しく解説します。
設計データ作成(CAM)
プリント基板の製造は、まず設計データの作成から始まります。CAD(Computer Aided Design)ツールを用いて回路図をもとに部品の配置や配線、ビアホールなどをレイアウトし、そのレイアウトを製造工程で使用できる形式に変換します。この製造用データを「CAM(Computer Aided Manufacturing)」と呼びます。
さらに、作成したレイアウトデータは製造前にシミュレーションツールを使って電気的な検証を行います。たとえば、隣接する回路同士が干渉して不要な信号が発生していないか、電力の出力・入力の値が整合されており、信号の反射や損失が最小限に抑えられているかなどです。
CAMデータは、各製造工程で正確な加工を行うために欠かせない情報であり、プリント基板の品質を左右する重要な工程です。
内層回路形成(エッチング1回目)
多層基板の製造では、まず内層から製作を始めます。この工程では、銅箔が貼られた内層用の絶縁基板にエッチングによって回路パターンを形成します。エッチングとは、不要な銅を化学的に溶かして除去し、目的の回路形状を残す加工方法です。
工程は以下のステップで進めます。
- フォトレジストの塗布
内層基材上の銅箔に、紫外線に反応して硬化する感光性のフォトレジストを塗布します。
- フォトマスクで露光・現像
回路パターンが描かれたフォトマスク(透明フィルム)を重ね、紫外線を照射します。紫外線が当たった部分は硬化し、パターンとして基板に残ります。紫外線が当たらなかった部分のレジストは、現像液で除去されます。
- エッチング(不要な銅箔部分を除去)
基板を薬品(塩化鉄や硫酸銅など)に浸して、レジストで覆われていない不要な銅箔部分を溶かし、回路パターンだけを残します。
- レジストの除去
最後に、保護用のフォトレジストを剥がして、内層の回路パターン形成が完了します。
積層
内層に回路パターンが形成されたあとは、多層プリント基板として完成させるために他の材料と重ね合わせる「積層」工程を行います。内層基板・絶縁層(プリプレグ)・外層基板を積み重ね、積層プレス機を使って熱と圧力を加えながら一体化します。
積層の際は、各層の回路パターンが正確に位置合わせされることが重要です。位置ずれが生じると、層間の接続不良や隣接配線のショートといった重大なトラブルの原因になります。
穴あけ加工
穴あけ加工の工程では、部品を実装するための取り付け穴や異なる層をつなぐスルーホールやビアホールを開けます。穴あけには主にドリルマシンが使われ、用途に応じてさまざまなサイズのドリルが使い分けられます。
最近では、基板の高密度化や微細化に伴い、レーザー加工も採用されるようになってきました。ただし、レーザーは高速かつ高精度な加工ができる一方で、樹脂への負担が大きいという懸念もあります。そのため、基板の種類や設計内容に応じて、最適な加工方法を選定する必要があります。
なお、プリント基板の製造工程において、「穴あけ加工」は時間とコストがかかる工程です。穴のサイズが小さく数が多いほど、その分コストは高まる傾向にあります。そのため、設計段階で、穴の数やサイズを適切に最適化することで製造コストを抑える工夫も欠かせません。
スルーホール形成
スルーホール形成は、多層基板において異なる層同士を電気的に接続するための工程です。開けた穴の内部に銅メッキを施すことで、各層を導通させるスルーホールが完成します。
外層回路形成(エッチング2回目)
外層回路形成では、プリント基板の表面に回路パターンを作成します。
前工程の「内層回路形成(エッチング1回目)」と同様に、フォトレジストの塗布、フォトマスクで露光・現像、エッチング、レジストの除去を行います。穴あけ済みのスルーホールなどには、レジストが入り込まないように塞いでおく必要があります。
ソルダーレジスト形成
回路パターンの形成が完了したあと、基板表面の保護と絶縁のために「ソルダーレジスト(緑色の絶縁インク)」を塗布します。
ソルダーレジストは不要な部分に半田が付着するのを防ぎ、ショートや誤作動を防止する重要な工程です。さらに、湿気やほこり、熱などの外的要因から回路を守る役割も果たします。多層基板では、このソルダーレジストが層間の絶縁としての機能も果たします。
シルク印刷
シルク印刷は、プリント基板上に部品名や型番、メーカー名などを印刷する工程です。印刷には一般的にインクジェットプリンターが使われ、ソルダーレジストによって絶縁・保護された表面の上に記号や文字を転写します。部品の実装やメンテナンス時の作業効率がよくなり、誤実装の防止にも役立ちます。
表面処理
プリント基板の回路パターンは銅でできており、そのままでは空気中の酸素に触れて酸化や腐食してしまい、半田付け不良の原因になります。これを防ぐために行うのが、「表面処理」です。表面処理では銅箔の露出部に半田付け性の向上と防錆を目的として、さまざまな処理が施されます。
一般的な方法には以下があります。
- 半田レベラー(有鉛・無鉛)
- ソルダコート処理
- プリフラックス処理
外形加工
外形加工はプリント基板の製造工程の最終段階で行われ、基板を所定のサイズや形状に仕上げます。それぞれの製品仕様に応じてピースに分けたり、開口部を加工したりする工程です。
また、実装後に不要な部分を簡単に取り外せるようにするため、Vカット加工を施す場合もあります。Vカットがあることで、不要部分の切り離しが、手で折り曲げるだけで、できるようになります。
最終検査
プリント基板の製造が完了したあとは、製品の品質と機能を確保するために各種検査を実施します。主な検査には、以下のようなものがあります。
- 導通検査(電気検査)
テストピンなどを使って配線が正しく接続されているか、断線やショートがないかを確認します。抵抗値の測定なども行われます。
- 外観検査(光学検査)
目視や画像認識カメラを用いて、基板表面のキズや汚れ、半田の状態、部品配置などの外観上の不具合を確認します。
プリント基板の設計上の考慮事項
プリント基板の設計には、高度な専門知識が求められます。複雑な回路構成や高密度実装を行う場合は、配線の最適化に加えて信号のクロストークや放熱設計など、技術的な配慮が必要になります。
製造工程では化学薬品や金属材料が使用されるため、環境負荷への対策も重要です。適切な処理が行われないと廃棄物による環境汚染のリスクがあるため、リサイクルや安全な廃棄処理の計画が必要です。
また、修理の観点でも課題があります。多層基板では内部の配線が外部から確認できないため、故障箇所の特定や修理が難しく、場合によっては基板全体の交換が必要になるケースもあります。
さらに、プリント基板は大量生産には向いていますが、少量生産ではコストが高くなる点がデメリットです。多層構造や特殊材料を使用した基板では、設計・製造ともにコスト負担が大きくなります。
プリント基板を設計するうえで、以上のような点を考慮しておく必要があります。
プリント基板の品質管理と検査基準の重要性
プリント基板の品質管理は、電子機器全体の性能に大きく影響する重要項目です。材料の選定から製造、完成品の検査に至るまで、厳格な品質管理が求められます。品質が不十分な場合、製品の故障や高額な損失につながるリスクがあります。
このリスクを回避するため、多くのメーカーはISO 9001などの国際規格を遵守し、製造プロセスの監視や完成品のテストを徹底しています。とくに航空宇宙や医療分野などで使用される基板には、業界団体や規制機関によるさらに厳しい認証が求められることもあります。
プリント基板の最新技術と今後
近年、電子機器の高性能化や小型化が進むなかで、プリント基板にもより高度な技術対応が求められるようになっています。ここでは、プリント基板において注目される最新技術について紹介します。
高密度化技術
今後のプリント基板には、さらなる高密度化の進化が求められます。たとえば、高密度な回路基板である「HDI(High Density Interconnector)基板」の採用により、軽量・薄型・高性能な回路設計が可能になり、電子機器の小型化と高機能化が実現します。
また、基板の土台となるガラスエポキシやガラスコンポジットなどの、サブストレート(基板材料)の選定も重要です。耐熱性や電気特性に優れた素材を使うことで、基板の信頼性と性能が向上します。
高周波・高速信号対応技術
プリント基板には、今後も高周波・高速信号への対応が求められます。高周波・高速信号を扱う基板では、信号の歪みや損失を防ぐための対策が欠かせません。
まず、信号伝送の品質を保つには、伝送路の抵抗値を一定に保つ「特性インピーダンス制御」が重要です。また、多層基板で使われるビアの不要部分(ビアスタブ)は信号の乱れの原因となるため、バックドリル加工などで除去する必要があります。
さらに、誘電損失を抑えるため、低誘電率の材料選定も重要となるでしょう。
熱対策技術
高性能化が進む電子機器においては、プリント基板の放熱対策が重要です。たとえば、アルミなどの金属ベース基板は、FR-4やCEM-3といった樹脂基板に比べて高い熱伝導性を持ち、効率的な放熱が可能です。
さらに、放熱性能を向上できるサーマルビア(放熱ビア)も重要です。サーマルビアは電気的に接続された複数層の間に設けられた穴で、熱を層間に逃がし、熱の分散を効果的に行えます。
また、銅コイン埋め込み基板では熱伝導率の高い銅を基板内に埋め込むことで、熱を基板の反対側へ効率よく伝達できます。
環境対応型技術
環境負荷を軽減するため、プリント基板にも環境に配慮した技術の導入が求められています。たとえば、フロンガスや塩素系化合物などの有害物質を含まない「ハロゲンフリー材料」や、水質汚染の原因となる鉛の使用を避けた「鉛フリー半田対応」などが挙げられます。
さらに、従来の材料にかわる生物由来の素材や、リサイクル可能な基板材料の活用といった取り組みも求められています。
プリント基板はオーダーメイドがおすすめ
抵抗やコンデンサなど電子部品の大部分は、メーカーが違っても仕様が同じで互換性がある部品を探す事は案外簡単です。
一方プリント基板はオーダーメイドで、設計者の意図に従って製造される部品です。
従って、他で同じ物を探しても他では調達できません。
注文の時点でデータを吟味し、設計者と綿密な仕様を打ち合わせした上で製造に入ります。
万一、製造でトラブルが発生した場合でも、他のメーカーで互換性のある基板を探す事は出来ません。
だからこそプリント基板の製造は信頼のおける所に依頼する必要があります。
プリント基板は電子機器に大きなメリットをもたらしています。
プリント基板を外注する際の選定ポイント
ここでは、外注先を選ぶ際に押さえておきたい主なポイントを紹介します。
設計サポートや技術力を確認する
プリント基板の種類は多様であり製造の難易度も異なるため、依頼内容に対応できる技術力を持つ外注先を選ぶことが重要です。
CAMデータ作成やエッチング、スルーホール加工など、各工程の技術水準にも差があります。また、高速信号対応や放熱設計、高密度設計などの高度な要件が必要な場合は、これらに対応したノウハウや実績を持つ企業を選定しなければなりません。
外注先を選定する際は、設備の充実度や対応可能な生産規模、過去の製造実績などから総合的に判断することが求められます。
ロットとコストのバランスを確認する
プリント基板を外注する際は、生産ロットとコストのバランスが重要です。大量生産が得意なメーカーもあれば、少量多品種や試作に対応する業者もあるため、目的に応じて選ぶ必要があります。
また、初期コストが安くても品質が低く、修理や返品対応にコストがかかると結果的に割高になる場合があるため、単純に費用だけで選ぶことも避けなければなりません。最小発注数量の確認や試作のコスト、設計変更への柔軟な対応などを事前にチェックしておくと安心です。
海外調達のリスクに気を付ける
海外でのプリント基板調達はコスト面でのメリットが大きい一方で、「品質のばらつき」や「納期遅延」のリスクが伴います。要求した水準を満たさない製品の納入や、生産・物流管理の不備による納期の遅れが発生することがあります。
これらのトラブルを防ぐには、現地と国内で二重の品質検査を実施している企業や、日本企業との長年の取引実績がある業者を選定することが重要です。このようなリスクや手間を踏まえると、安定した品質と納期が期待できる国内製造を選ぶのが安心です。
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プリント基板は、その材料や特性によって、さまざまな特徴を持ちます。想定している使用用途や環境に適したプリント基板の材料をお選びいただくことで、優れたパフォーマンスを発揮します。逆に、不適切な材料を選んでしまうと、想定を下回るパフォーマンスしか発揮できない場合もありますので、それぞれの材料の特性をご認識された上で、最適なプリント基板の材料をお選びください。
基板屋シーネックスでは、プリント基板の材料を各種ご用意しておりますので、お客様のご要望に応じて最適なプリント基板の材料をご提案し、製造しております。
製造日数、仕様、価格等はご要望の内容により異なります。まずは「見積もり依頼」ページからお気軽にご連絡ください。